ワクチン接種時の注意点
ワクチンとは
ワクチンとは、接種することで感染症の予防に有効な作用を持つ医薬品の事です。歴史的に果たしてきた役割は大きく、これまでに多くの命が失われるのを防いできました。現在も、感染前にワクチンを接種する事でしか救命が難しい感染症もたくさんあります。狂犬病などは発症すれば人も犬も死亡率100%、というのは有名ですね。
アナフィラキシー、じんま疹
すべてのワクチン接種のみならず、多くの医療薬品に言える事ですが、最も重要な合併症はアナフィラキシーです。
アナフィラキシーとはアレルゲン等の侵入により複数臓器に全身性にアレルギー反応が起こり、生命に危機を与えうる過敏反応です。
もともとアレルギーを指摘されている方が、アレルゲンを摂取した際に発症することが多いです。日本では、卵(28%)、乳製品(23%)、小麦(18%)の順で報告されています。
通常のワクチンでの発生頻度は1.3人/100万人、新型コロナウイルスワクチンは2.8-4.7人/100万人と報告されています。代表的な抗生剤であるペニシリン系のアナフィラキシー発作頻度は100-500人/100万人です。予防薬と治療薬の違いはありますが、本当に発症する人はごくわずかです。
アレルゲンが体内に入ると、毒性がないのに身体は敵性物質だとみなして攻撃を始めます。攻撃を始めるにあたって、燃料である血液が豊富にないことには戦いを始められません。なので、血管を広げる作用の物質をばらまくのですが、これが効きすぎると血管内の水分も漏れ出て局所的なむくみになります。
皮膚でこれが起こるとじんま疹となります。かゆみが出て、まぶたや口唇などの粘膜にも腫れが出現します。軽症であれば部分的なもので収束します。
中等症以上になると、むくみが腸管や気道にも出現し、腹痛や息切れなどの症状が起こります。血管の開きと水の漏れ出し具合も馬鹿にならなくなり、血圧も低下傾向となります。
こんな時に、絶大な効果を発揮する薬があります。エピネフリンというのですが、筋肉注射を行う事によってものの数分以内に劇的に症状を改善させます。
アナフィラキシーは基本的には15-30分以内で症状が出現します。なので、新型コロナウイルスワクチン接種時には30分程度接種した医療機関内に滞在する事が推奨されています。全身のかゆみが出現したり、顔がはれぼったくなったり、息苦しさや腹痛を感じたらすぐにスタッフに声をかけるようにしてください。
その他の症状
投与した腕の腫脹、熱感、疼痛が出現する事が多いです。発熱がある方もいらっしゃいます。特に細菌が入った訳ではないので、解熱鎮痛剤を飲んで待っていれば、1-2日程度で収まります。
新型コロナウイルスワクチンによくある症状
初回の投与時には、投与した日の夕-夜から、接種した腕（肩）の筋肉痛が出現する方が多いです。
接種日の深夜から発熱、頭痛、倦怠感などを訴える方が多いです。インフルエンザに罹ったみたいだった、という方もいらっしゃいました。解熱鎮痛剤がよく効き、1日程度で収まります。
特に昨今では、発熱されている方はどこでも施設利用を断られます。接種の翌日には、外出予定を入れないようにした方がよいと思われます。
・COVID armについて
接種した腕に遅れて皮疹が出現する方もいらっしゃいます(初回接種の0.8%、2回目接種の0.2%という報告あり)。虫刺されのような小さな皮疹の場合もあれば、腕全体に広がる場合もあります。海外ではCOVID armと呼ばれており、無害なのでワクチン接種をためらわないように、と啓蒙されています。
ワクチンを接種してから4-11日後、平均すると7-8日目に発生します。一度発生した場合は4-5日間程度持続し、自然消失します。触ると痛みを感じたり、しびれ感があります。特に病院での加療が必要な方はいませんでした。
出現した場合には、2回目の接種は反対側の腕に行う事が推奨されています。
最後に
当院でも新型コロナウイルスワクチンの接種が5月22日より開始となっています。
詳しくは予約ページをご参照ください。
参考文献
日本アレルギー学会 アナフィラキシーガイドライン
Akiyama H, et al. Adv Food NutrRes 2011; 62: 139-711
New Eng J Feb 24,2021 DOI:10.1056/NEJMoa2101765
N Engl J Med 2021; 384:1273-12771
Jama 2021 published online Feb 12, 2021
Allergy Clin Immunol. 2016;137(3):868-878
