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新型コロナウイルスよもやま話

当院に勤務している木村医師は、市立総合病院に所属する集中治療医として、重症コロナウイルスに対する診療に携わってきました。
その経験を元に、医療者側から見たコロナって実際どうだったの?という話を提供させていただきます。

コロナ診療が始まった時

現在まで、市立総合病院で180人以上の重症コロナ患者の診療に携わってきました。
始めは大型客船の話だったのが、いよいよ国内にも患者が出てきたという話になり、
自分の勤務する病院に重症患者が搬送されてくるまでは、あっという間でした。
診療の方法も、いかに病床を隔離するかのノウハウも確立していない中で、病院のスタッフ皆で力を合わせて少しずつ形作っていきました。
幼い子供がいた自宅内でも隔離をして、窓越しに手を振るだけの接触にしていたら、0歳の子供が父を忘れたなんて事もありました。

当診療所は、30年前に設計された診療所であるため、そのまま運用していたのでは感染対策が十分ではありません。
病院で行われている徹底された感染対策を持ち込み、発熱患者は院外スペースまたは電話診での対応とさせていただきました。
場合によっては、発熱した患者さんは防護服を着ての往診も行っていました。
抗原検査が行えるようになるまでは、確定診断ができないため、みなコロナウイルス感染者として対応せざるを得ず、
手探りで診療方法を模索する日々が続きました。

重症患者が多すぎた頃

重症患者対応では、一番大変だったのは、α株の時でした。
ワクチンがまだ出来ていない段階で、毎日1人から2人の重症患者が入院になります。
一度コロナウイルスが重症化すれば、インフルエンザ肺炎などとは比較にならないぐらい、肺の環境が荒廃します。
インフルエンザ肺炎は、極期を過ぎれば肺に障害はほとんど残らず治癒することが多いのですが、
コロナウイルス肺炎の重症例は、肺構造が破壊されるため、治癒に至らず命を落とす例、治癒したとしても重い肺障害を残す例もあり、
集中治療室への滞在時間も長くなります。
少なくとも1週間、長ければ2,3週間またはそれ以上の人工呼吸器をつけた診療が行われる事になります。
そうなると、集中治療病床がまったく足りず、非コロナ患者の重症病床、続いて非コロナ患者の中等症病床も
コロナ重症病床に置き換えて診療を行う必要がありました。
ひどい時にはほぼすべての重症・中等症病床がコロナ重症患者で埋まる状況となり、
非コロナ患者の診療は極端に制限するほかありませんでした。
癌などの予定手術も、延期できるものは可能な限り延期し、なんとか病床をやりくりする日々が続きました。

ワクチンができた!でもワクチンが届かない!!!

いよいよワクチンが到来し、医療従事者への投与が始まります。
その後、一般の方への投与が始まりました。
当診療所でも、可能な限り希望者が投与できるようワクチン接種業務を行っていました。
ところが、市に予約した接種用ワクチンが全然届きません。
予約ができないならまだいいのですが、予約していたワクチンが届かない事が、2週間前にわかる、という状況。
初回接種は3週間後に2回目投与をしなければなりませんし、遅くとも1か月前にはワクチン接種予約はすべて埋まっています。
延期、キャンセル、謝罪の電話連絡が、ワクチン予約希望の電話対応に重なり、診療所の電話がパンク状態となりました。
ご迷惑をおかけした方、本当に申し訳ありませんでした。
ワクチンをなかなか接種できず不安な思いをした方もたくさんいらっしゃったと思います。
ワクチンを手配する市の職員の方々も、中央とのやり取りでワクチンを用意しなければならず、その苦労は甚大なものだったと思います。
本当に、今のこの状況まで落ち着いて、よかったですね。

5類に移行して

現在は、ワクチンの効果もあり、コロナ流行期であっても重症患者が数名程度入院する程度に減少しました。
感染症としても5類に移行に、経済活動も徐々に活発になり本当によかったと思います。
ただし、5類になっても、重症化した場合、コロナの肺環境を荒廃させる力は変わっていません。
なので、高リスク患者が多数通院・入院している医療機関としては、なかなか対策を緩める訳にはいかないんですね。
病院でも診療所でも少しずつ、バランスを見て、流行の程度を勘案しつつ対応の調整を続けています。

感染対策に関して

重症化しやすいのは、高齢者、糖尿病などの基礎疾患をお持ちの方、肥満の方、ワクチンを未接種の方です。
特に、ワクチン未接種の糖尿病、肥満を持つ男性の重症患者は多かった印象があります。
高齢の方、上記に該当される方は引き続き、流行期におけるマスク着用、手指衛生の感染対策をしていただくのがよいと思います。
若い方では、咽頭痛や咳などが長引き、普通の風邪よりもしんどい、という方が多い印象もありますが、逆に鼻水や軽い咽頭痛だけ、という方もいらっしゃいます。
お近くに高齢者がいる場合や、風邪症状があっても外出しなければならない場合、
マスクを着用して頂けるとありがたいな、と重症者を診る医師として思っています。

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